コンパニオン診断(Companion diagnostics ; CoDxもしくはCDx)とは、医薬品の効果や副作用を治療前に検査することにより、投与薬剤の選択や投与量を投薬前に予測するために行われる 臨床検査のことです。この治療薬と対になって効果の有無を調べる診断薬のことをコンパニオン診断薬と言います。コンパニオン診断薬を用いることで、治療薬を投与する前に患者様への薬剤効果や副作用を予測し、患者様一人ひとりの個性にかなった治療を行うことができます(個別化医療の実現)。 当社では世界で初めて医療用診断機器として認可されたDNAシークエンサーやCGHアレイなどの最新鋭の遺伝子解析装置を導入した業界では初となるCDxに特化した遺伝子関連検査部門を設立し、医療機関へ最先端の情報をお届けしております。
EGFRチロシナーゼ阻害薬に対するコンパニオン診断
非小細胞肺癌(NSCLC)の治療薬である各種のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬:EGFR-TKI(「ゲフィチニブ」、「エルロチニブ」、「アファチニブ」など)は、EGFR遺伝子変異陽性例において効果を発揮することがわかっています。(一部の耐性変異を除く)
現在、EGFR遺伝子変異検査は、EGFR-TKIの効果を予測するバイオマーカーとして認知され、同治療薬の適応を決める検査として広く実施されています。
ALK阻害剤に対するコンパニオン診断
EML4-ALK遺伝子転座は肺腺癌のおよそ5%に認められ、EML4遺伝子とALK遺伝子の融合遺伝子から産生される異常なタンパク質が発癌作用を有することが報告されています。
ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌(NSCLC)にALK阻害剤(「クリゾチニブ」など)が効果を発揮することが報告され、現在ではALK阻害剤の適応を決定するために、FISH法、IHC法、RT-PCR法による検査が行われています。
抗EGFR抗体薬に対するコンパニオン診断
多くの大腸がんでEGFRが高発現していることが知られており、治療薬として抗EGFR抗体薬が使用されています。KRAS遺伝子エクソン2,3,4,NRAS遺伝子エクソン2,3,4のいずれかに変異を有する場合は、抗EGFR抗体薬の治療効果が期待できないとの報告がなされています。
「大腸がん患者におけるRAS遺伝子(KRAS/NRAS遺伝子)変異の測定に関するガイダンス」では、RAS遺伝子の測定に際しKRAS及びNRAS遺伝子のコドン12,13,59,61,117,146に存在する変異の有無を測定することが望ましいと記載されています。
抗EGFR抗体薬を用いる際のRAS遺伝子変異情報を得るための検査方法として有効です。
抗EGFR抗体薬に対するコンパニオン診断
大腸がんの治療薬である抗EGFR抗体薬(セツキシマブ)の投与にあたっては、病理組織におけるEGFRタンパクの発現を免疫組織化学染色法(IHC: Immunohistochemistry )にて確認することが必要とされており、セツキシマブの適応を決定するための検査です。
ただしRAS(KRAS/NRAS)遺伝子に変異があるとセツキシマブの効果が期待できないため、RAS遺伝子検査とあわせて実施されることが一般的です。
主要ドライバー遺伝子変異を網羅したパネル検査
近年、分子標的治療薬の開発とともに、治療薬の効果予測や予後予測を可能にするバイオマーカー研究が注目されています。なかでもBRAF、KRAS、NRAS、PIK3CAの遺伝子変異は、さまざまな"がん"で報告されており、治療薬の効果を調べるバイオマーカーとして実地臨床で利用されてきています。
本検査は、基礎研究の成果を臨床で実現化させるための橋渡し研究に役立ちます。
メラノーマ治療薬に対するコンパニオン診断
BRAF阻害薬であるゼルボラフの悪性黒色腫瘍患者への適応を判定するための検査です。癌組織から抽出したゲノムDNA中のBRAF遺伝子変異(V600E)を検出します。
抗HER2抗体に対するコンパニオン診断
HER2検査は乳癌および胃癌の分子標的治療薬である『トラスツマブ』の適応を決定する際に行われますが、HER2遺伝子の増幅をみる方法(Fluorescence in situ hybridization: FISH法)、HER2タンパクの過剰発現を見る方法(IHC: Immunohistochemistry )があります。
チロシンキナーゼ阻害薬に対するコンパニオン診断および治療効果のモニタリング
「メシル酸イマチニブ」は、CML(慢性骨髄性白血病)治療に用いられる分子標的薬であり、CMLの発症本態であるBcr-Ablチロシンキナーゼを標的とし、その活性を阻害することで細胞内シグナル伝達を抑え、CML細胞の細胞増殖を抑制することが示されています。
定量リアルタイムRT-PCR法を用いてBCR-ABL融合遺伝子のmRNAの発現量を測定します。
抗CCR4抗体に対するコンパニオン診断
CCR4(Chemokine(C-C motif)receptor 4)は、白血球の遊走に関与するケモカイン受容体の一つです。ある種の造血器腫瘍において高発現していることが知られており、ATL(成人T細胞白血病)においては約90%の症例で発現していることが報告されています。
「モガムリズマブ」は、抗体依存性細胞障害(ADCC)活性により抗腫瘍効果を発現する分子標的薬であり、CCR4陽性の再発/難治性のATLに対して有用とされています(CCR4陽性の再発/難治性の末梢性T細胞リンパ腫および皮膚T細胞性リンパ腫への適応が拡大されました)。同治療薬の適応を決める際には、CCR4タンパクが陽性であることを確認することが必要です。検査方法としては、組織、細胞中のCCR4タンパクの発現をみる方法(IHC法)、血液中の血球細胞表面上に発現するCCR4タンパクを検出するフローサイトメトリー法があります。
Pharmacology(薬理学)とGenomics(ゲノム学)の造語で、「薬理ゲノム学」と訳されます。薬物の効果や副作用の出方には個人差があることはこれまでも経験上知られていました。
患者個々の遺伝的特徴を把握し、個々の患者に最適な薬剤を選択し、最適な用法用量で投与すること(薬剤治療方針の決定)を目指します。昨今のゲノム研究の進展により、遺伝子検査でこれらを予測することが可能となりました。
向精神病薬、抗血小板薬などの副作用予測、ピロリ除菌治療薬の効果予測
CYP2C19は、プロトンポンプ阻害剤、抗不安薬、抗てんかん薬などの薬物を代謝する酵素で、CYP2C19遺伝子で認められる点変異(*2G681A、*3G636A)により酵素活性が低下することが知られています。中でもプロトンポンプ阻害剤を用いるピロリ菌の除菌治療では、本多型が除菌成功率に影響する事が明らかになっています。
日本人では約20%が代謝能の低いPoor Metabolizer(PM)と言われ、本検査は治療効果の向上や副作用低減のための薬物投与量の個別化・適正化に重要です。
プロトンポンプ阻害剤 | オメプラゾール |
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抗不安薬 | ジアゼパム |
抗てんかん薬 | S-メフェニトイン |
抗うつ薬 | イミプラミンなど |
抗血小板薬 | クロピドグレル(プラビックス) |
抗精神病薬、乳がん治療薬の効果予測
CYP2D6は、臨床上重要な中枢神経系薬、β遮断薬、抗不整脈薬、抗高血圧薬など50種を越える薬物を代謝する酵素です。日本人における代謝欠損型のヒト(Poor Metabolizer)の割合は1%未満ですが、代謝能の低いヒト(Intermediate Metabolizer)の割合は15~20%と高いと言われています。また、代謝能が極めて高いヒト(Ultrarapid Metabolizer)も存在します。この代謝の個人差はCYP2D6遺伝子の多型に起因するため、本検査により代謝能の予測が可能で、治療前の投薬方針決定や創薬における治験の際に役に立ちます。
イリノテカンの副作用予測
「イリノテカン」の適用は、肺がん、子宮頸がん、卵巣がん、非ホジキンリンパ腫、および手術不能または再発した胃がん・大腸がん・乳がんなどです。特に、大腸がんや肺がんでは、重要な役割を果たしています。UGT1A1は肝臓のUDPグルクロン酸転移酵素(UGT:Uridine diphosphate glucuronosyltransferase)の分子種の1つであり、イリノテカン塩酸塩水和物(イリノテカン)の代謝酵素です。UGT1A1は遺伝子多型(*28、*6、*27)により、「イリノテカン」の重篤な副作用(白血球減少や下痢)の発現率が高くなることが報告されています。
本検査でUGT1A1遺伝子多型を調べることにより、イリノテカン治療における副作用発生の可能性を予測することができます。
C型慢性肝炎のインターフェロン治療の効果予測
IL(Interleukin)28B遺伝子はIFN-λの一種であり、クラスIIサイトカインレセプター(IL28RA、IL-10Rβのヘテロ二量体)に結合し、インターフェロン誘導遺伝子の発現レベルを向上させ抗ウイルス活性を発揮することが報告されています。IL28B遺伝子の多型がC型慢性肝炎のペグインターフェロン/リバビリン治療の効果に関係することがゲノムワイド関連解析(GWAS)により明らかになりました。
本検査によりインターフェロン治療による治療効果を高い確率(約80%)で予測することが可能といわれています。
当社では、これまでの検査方法では検出できなかった微量の病原体遺伝子を高感度に検出できるNested PCR法や、複数の病原体遺伝子を一度の検査で検出するマルチプレックスPCR法など、特色のある病原体遺伝子検査項目を取り揃えています。
髄液からの結核菌高感度検出が可能
結核性髄膜炎(tuberculous meningitis)の診断には髄液所見での糖及びクロールの低下、ADAの上昇が参考とされ、確定診断には髄液検体からの塗抹、培養による結核菌の証明が必要とされています。しかし、髄液所見は必ずしも典型的な所見を呈さない場合も多く、また、結核菌の培養には4~8週間を要し、その検出も60%程度と低いことが、従来より問題とされています。短期間で高感度に結核菌を検出する検査法として近年PCR法が臨床で実施されていますが、感度や特異度の問題が指摘されており、陽性率は65~93%と一定していないのが現状です。
これに対し、PCR法の感度と特異度を劇的に高める方法としてNested PCR法が注目されています。これは1対のPCRプライマーの内側にもう1対のプライマーを設定し2ステップのPCRを行う方法です。
性感染症病原体の同時検出が可能
現在、性感染症(STD、STI)の診断においては、Chlamydia trachomatis(クラミジア・トラコマチス)及びNeisseria gonorrhoeae(淋菌)の核酸検査が広く普及していますが、STD/STIの病原体はそれらに限定されるわけではありません。クラミジア・トラコマチスも淋菌も検出されない「非クラミジア性非淋菌性性感染症」の症例は数も多く、培養法など従来の検査方法ではこれらの病原体を検出することは困難でした。当社では、6種類のSTD/STI病原体遺伝子を同時測定できる「STDマルチプレックスPCR検査」を受託しています。
呼吸器感染症ウイルスの同時検出が可能
呼吸器感染症は、全年齢層で見られる一般的な疾患の一つであり、ウイルス性のものと細菌に起因するものがあり、治療方針を立てる上でその鑑別は非常に重要である反面、臨床症状が似通っているため、病原体を特定することは難しいと言われています。当社では12種類の呼吸器感染症ウイルスを同時測定できる「呼吸器感染症ウイルス同時検出PCR検査」を受託しています。
直接作用型HCV治療薬(DAA)に対するHCVの薬剤耐性を検査
近年、従来の抗HCV治療薬とは全く異なるタイプの薬物である直接作用型抗ウイルス剤(Direct Acting Antivirals:DAAS)が開発され、より高い治療効果が期待できるようになりました。
しかしながら、NS5A領域(「L31」、「Y93」)、NS3領域(「D168」)に変異をもつウイルスはDAASの効果が著しく低下することが報告されています。当社では同領域の薬剤耐性変異を調べる「HCV薬剤耐性変異解析」を実施しています。
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