各種心筋マーカーについて
心筋マーカーには、心臓に損傷を受けることで血中に増加するCK、ミオグロビン、H-FABPなどの細胞質可溶性分画由来のものと、ミオシン軽鎖ⅠやトロポニンTなどの構造蛋白に由来するものが従来から用いられていました。
近年では、心臓にストレスが加わったときに血中に増加する「心筋ストレスマーカー」としてHANP(心房性ナトリウム利尿ペププチド)、BNP(心室性ナトリウム利尿ペププチド)、NT-proBNPなどが測定されており、これらは心不全の診断や重症度の把握に用いられています。
心筋ストレスマーカーについて
心筋ストレスマーカーには、HANP(心房性ナトリウム利尿ペププチド)、BNP(心室性ナトリウム利尿ペププチド)、NT-proBNPがあります。
HANPは心房で合成・分泌されるホルモンであり、透析患者の至適体重管理によく用いられます。BNPは心室で合成・分泌され左室拡張末期圧を反映することから、心不全の診断補助として使用されています。 NT-proBNPは、前駆体ホルモンであるproBNPが分解されて生じるホルモンであり、1:1の割合でBNPと共に血中に放出され、BNPと同様に心不全で診断補助に使用されています。
BNPとNT-proBNPの違いについて
BNPとNT-proBNPは共に心不全の診断などに使用され両者の有用性はほぼ同等との報告があります。
しかしながら、NT-proBNPは”血清”で検査が可能であり、また、採血後の検体の安定性に優れ、生化学検査と同一の採血管で依頼が可能などの運用面での有用性があります。
また、BNPと異なりNT-proBNPは代謝経路が腎臓のみであることから、糸球体濾過値の低下と共にBNP以上に上昇することから、心機能のみならず腎機能も併せて評価する心腎関連マーカーとして注目されております。
BNP | NT-proBNP |
検体種類 | EDTA血漿 | 血清 |
検体の保存 | 凍結 | 冷蔵 |
半減期 | 約20分 | 約120分 |
代謝経路 | 受容体(NPR-A、NPR-C) 蛋白分解酵素(NEP)、腎臓 |
腎臓 |
〔参考〕
慢性心不全治療ガイドライン 2010年改訂版 (日本循環器学会,日本移植学会,日本胸部外科学会,日本高血圧学会,日本小児循環器学会,日本心臓血管外科学会,日本心臓病学会,日本心臓リハビリテーション学会,日本心電学会,日本心不全学会,日本超音波医学会,日本内分泌学会,日本不整脈学会)