検体採取について
骨代謝マーカーには一般に、朝高く午後に低下する日内変動の存在が知られており、この為、検体の採取にあたっては、同じ時刻に採取するなど条件を同じにすることが望ましいとされております。また、骨代謝マーカーには、腎機能低下や食事の影響をうけるものが存在することも知られておりますが、血清マーカーであるTRACP-5b、BAP、PⅠNPは日内変動、腎機能低下や食事の影響はあまり見られません。一方、尿中マーカーのDPDや尿中NTXは日内変動や腎機能低下の影響を受けるため、採取時刻などの条件に注意が必要です。
骨粗鬆症治療薬の選択と骨代謝マーカー
骨代謝マーカーには骨吸収マーカー(※1)と骨形成マーカー(※2)があります。 治療薬が未確定の場合、骨吸収マーカーであるDPD、NTX、TRACP-5bを測定し、その測定値が基準値の上限以上を示す場合には、ビスホスホネート、SERM(選択的エストロゲン受容体モジュレーター)、エストロゲンなどの骨吸収抑制作用をもつ薬剤が推奨されております。また、これらの薬剤を使用している場合の治療効果判定には、DPD、NTX、TRACP-5b、BAP、P1NPが使用可能です。PTH製剤を治療薬として使用している場合には、P1NPが判定に使用可能です。 尚、治療薬の選択には、骨吸収マーカーの測定値以外に、既存の骨折の有無や患者背景、合併症、過去の治療歴などを総合的に判断して選択すべきとされています。
※1 DPD、NTX、TRACP-5bなど
※2 BAP、P1NPなど
骨粗鬆症治療薬の効果判定について
骨代謝マーカーを用いて治療効果を判定するためには、治療開始前のベースライン値と治療開始から一定期間を経過した後の値との変化から判定されます。一般に、最小有意変化(Minimum Significant Change:MSC ※3)を超える変化があるか否かが基準となります。
※3 閉経前女性における午前の日差変動の2倍を表す。
〔参考〕
・骨粗鬆症診療における骨代謝マーカーの適正使用ガイドライン2012年版(日本骨粗鬆学会 骨代謝マーカー検討委員会)
・骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年版(骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会)(日本骨粗鬆症学会・日本骨代謝学会・骨粗鬆症財団)