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HTLV-1の検査の進め方について
HTLV-1とはリンパ球に感染するウイルスで、そのキャリアの一部からは、ATL(成人T細胞白血病:Adult T cell Leukemia)、HTLV-1関連脊髄症(HAM)、ぶどう膜炎などのHTLV-1関連疾患などが発症します。 感染経路としては主として母乳などによる母子感染が多いといわれており、キャリアは九州・沖縄に多く分布していましたが、最近は大都市圏にも拡散していることが分かっています。
妊婦健診について
母子感染の可能性を減らすために、厚生労働省では「平成23年度からHTLV-1抗体検査を妊婦健康診査の標準的検査項目に追加する」と決定し、出産までに準備が出来るように、妊娠初期から妊娠30週頃までのあいだでPA法もしくはEIA法にてHTLV-1抗体検査を実施することとしています。
検査方法について
妊婦検診の抗体検査の方法については、スクリーニングとして、PA法、EIA法などがありますが、どの検査にも非特異反応による偽陽性が存在することから、必ず確認検査としてウエスタンブロット法〔WB法〕を行う必要があります。
なお、スクリーニング検査の結果だけでキャリアと判断することは避けねばならないとされています。
また、確認検査のウエスタンブロット法〔WB法〕で判定保留となった場合、PCR法も存在しますが、保険未収載の検査となります。
〔参考〕
「HTLV-1 母子感染予防対策 医師向け手引き」 平成21年度厚生労働科学研究費補助金厚生労働科学特別研究事業「HTLV-1の母子感染予防に関する研究」報告書(改訂版)(研究代表者:齋藤滋富山大学大学院教授)平成23年3月
BNPとNT-proBNPの違いについて
各種心筋マーカーについて
心筋マーカーには、心臓に損傷を受けることで血中に増加するCK、ミオグロビン、H-FABPなどの細胞質可溶性分画由来のものと、ミオシン軽鎖ⅠやトロポニンTなどの構造蛋白に由来するものが従来から用いられていました。
近年では、心臓にストレスが加わったときに血中に増加する「心筋ストレスマーカー」としてHANP(心房性ナトリウム利尿ペププチド)、BNP(心室性ナトリウム利尿ペププチド)、NT-proBNPなどが測定されており、これらは心不全の診断や重症度の把握に用いられています。
心筋ストレスマーカーについて
心筋ストレスマーカーには、HANP(心房性ナトリウム利尿ペププチド)、BNP(心室性ナトリウム利尿ペププチド)、NT-proBNPがあります。
HANPは心房で合成・分泌されるホルモンであり、透析患者の至適体重管理によく用いられます。BNPは心室で合成・分泌され左室拡張末期圧を反映することから、心不全の診断補助として使用されています。 NT-proBNPは、前駆体ホルモンであるproBNPが分解されて生じるホルモンであり、1:1の割合でBNPと共に血中に放出され、BNPと同様に心不全で診断補助に使用されています。
BNPとNT-proBNPの違いについて
BNPとNT-proBNPは共に心不全の診断などに使用され両者の有用性はほぼ同等との報告があります。
しかしながら、NT-proBNPは”血清”で検査が可能であり、また、採血後の検体の安定性に優れ、生化学検査と同一の採血管で依頼が可能などの運用面での有用性があります。
また、BNPと異なりNT-proBNPは代謝経路が腎臓のみであることから、糸球体濾過値の低下と共にBNP以上に上昇することから、心機能のみならず腎機能も併せて評価する心腎関連マーカーとして注目されております。
BNP | NT-proBNP |
検体種類 | EDTA血漿 | 血清 |
検体の保存 | 凍結 | 冷蔵 |
半減期 | 約20分 | 約120分 |
代謝経路 | 受容体(NPR-A、NPR-C) 蛋白分解酵素(NEP)、腎臓 |
腎臓 |
〔参考〕
慢性心不全治療ガイドライン 2010年改訂版 (日本循環器学会,日本移植学会,日本胸部外科学会,日本高血圧学会,日本小児循環器学会,日本心臓血管外科学会,日本心臓病学会,日本心臓リハビリテーション学会,日本心電学会,日本心不全学会,日本超音波医学会,日本内分泌学会,日本不整脈学会)
百日咳菌抗体のPT抗体とFHA抗体の意義について
感染症診断の基本は病原体の分離であり、百日咳菌感染でも分離培養が勧められております。しかしながら成人の場合、発症後3週間での分離率が1~3%と低い課題があります。
従来、百日咳菌感染の血清診断には凝集法が用いられておりました。しかし、乳児から高齢者までの広い年齢層で高い凝集素価を保有しており、これが感染によるものか、過去に使用された全菌体百日せきワクチンの影響であるのかが不明であり、感染診断に適用することに困難さがありました。(現在、試薬の製造中止により受託しておりません。)
百日咳菌抗体[EIA法]では、PT(Pertussis Toxin:百日咳毒素)-IgG抗体、FHA(Filamentous Hemagglutinin:繊維状赤血球凝集素)-IgG抗体を検出します。
FHAとPTのうち、特異度が高いのはPT-IgGであり、PT-IgGは感染後、4.5ヶ月の時点で減少し始め、1年以内に82%は陰性化すると言われております。このため、PT-IgG抗体は単血清で急性感染の指標となると言われております。
FHA-IgGについては、繊維状赤血球凝集素であることから、同種のパラ百日咳菌など菌体にも存在し、交差反応が認められることから感染診断には不向きです。
〔参考〕
咳嗽がいそうに関するガイドライン第2版
・第11回厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会資料(平成22年7月7日),資料3-8,百日せきワクチンに関するファクトシート,国立感染症研究所(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000bx23-att/2r9852000000byfg.pdf(PDF:2.28MB))
・国立感染症研究所 IASR Vol.32 No.8(No.378)August 2011 (http://idsc.nih.go.jp/iasr/32/378/kj3782.html)
骨粗鬆症における骨代謝マーカーの利用方法について
検体採取について
骨代謝マーカーには一般に、朝高く午後に低下する日内変動の存在が知られており、この為、検体の採取にあたっては、同じ時刻に採取するなど条件を同じにすることが望ましいとされております。また、骨代謝マーカーには、腎機能低下や食事の影響をうけるものが存在することも知られておりますが、血清マーカーであるTRACP-5b、BAP、PⅠNPは日内変動、腎機能低下や食事の影響はあまり見られません。一方、尿中マーカーのDPDや尿中NTXは日内変動や腎機能低下の影響を受けるため、採取時刻などの条件に注意が必要です。
骨粗鬆症治療薬の選択と骨代謝マーカー
骨代謝マーカーには骨吸収マーカー(※1)と骨形成マーカー(※2)があります。 治療薬が未確定の場合、骨吸収マーカーであるDPD、NTX、TRACP-5bを測定し、その測定値が基準値の上限以上を示す場合には、ビスホスホネート、SERM(選択的エストロゲン受容体モジュレーター)、エストロゲンなどの骨吸収抑制作用をもつ薬剤が推奨されております。また、これらの薬剤を使用している場合の治療効果判定には、DPD、NTX、TRACP-5b、BAP、P1NPが使用可能です。PTH製剤を治療薬として使用している場合には、P1NPが判定に使用可能です。 尚、治療薬の選択には、骨吸収マーカーの測定値以外に、既存の骨折の有無や患者背景、合併症、過去の治療歴などを総合的に判断して選択すべきとされています。
※1 DPD、NTX、TRACP-5bなど
※2 BAP、P1NPなど
骨粗鬆症治療薬の効果判定について
骨代謝マーカーを用いて治療効果を判定するためには、治療開始前のベースライン値と治療開始から一定期間を経過した後の値との変化から判定されます。一般に、最小有意変化(Minimum Significant Change:MSC ※3)を超える変化があるか否かが基準となります。
※3 閉経前女性における午前の日差変動の2倍を表す。
〔参考〕
・骨粗鬆症診療における骨代謝マーカーの適正使用ガイドライン2012年版(日本骨粗鬆学会 骨代謝マーカー検討委員会)
・骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年版(骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会)(日本骨粗鬆症学会・日本骨代謝学会・骨粗鬆症財団)